検査結果を聞いて、一安心

血液検査のASTとALT、知っていますか?

私は核酸医薬品の研究を行っていました。遺伝子発現の仕組みを利用した画期的なお薬なのですが、残念なことに副作用として肝臓と腎臓にダメージを与えてしまいます。そこで、肝臓への毒性(肝毒性)を減らすことを主眼にして、マウスを使った毒性評価試験を行っていました。その際指標となるのが、皆さんよくご存じのASTとALTの値です。知らないという人は、ご自身の血液の検査結果報告書をご覧ください。並んで表示されていると思います。

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核酸医薬品を注射して数日すると、ASTやALTの上昇が観察されます。そうするとアウトです。どういうことかと言うと、肝臓に届いた核酸医薬品の毒性が強いと、ASTとALT値が上昇してしまいます。注射された核酸医薬品のために肝臓の細胞が痛んでいる(肝細胞障害)ことが血液検査でわかるわけです。それに、再現性が大変良い、肝臓毒性評価試験では必ずASTとALT値を測定します。ヒトでも同じですね。肝臓が痛んでくると、ASTとALT値が上昇することになります。ちなみに、ヒトとカタカナ書きで表記されているときは、実験対照が人の場合で、カタカナ書きのヒトにします。ねずみではなく、マウスですね。

今回の結果を聞いてきました

私のブログ、7月1日「3か月で血圧が下がりました!」をご覧ください。2016年の1月から2月にかけての検査で、肝臓の門脈周囲の側副血行路、肝嚢胞に肝嚢ポリープが見つかっています。そのため、担当医から血圧を下げるように言われ、野菜中心の生活をすることによって血圧を下げることに成功したお話です。

見つかった時は、そりゃ大変心配になりました。それから、すなわち2016年から半年に一回ずつの頻度でCTやMRI、エコー検査などを受け続けています。ついでに胃内視鏡検査もやっています。今も元気に生活していますので大丈夫だと思うのですが、やはり毎回、検査結果を聞くまでは心配です。今年は6月の末に胃内視鏡検査とエコー検査を受けてきました。そして、昨日、その結果を聞いてきました。

担当医の先生に呼ばれ診察室の扉を恐る恐る開けて中に入ると、毎回そうなのですが、マスク越しでもわかるくらいの満面の笑みで先生は迎えてくれます。「はい、先日の検査お疲れさまでした、大変でしたか、今回も特に変わったところはありません、最初の時(2016年2月)から変わっていません、このまま経過観察しましょう」「血液検査でも肝臓の線維化を示すような結果は出ていません」「それでは、また、半年後にCT検査入れときますので・・・」。胃の検査も受けていますのでもう少し細かいことを説明していただきましたが、要点はこんな感じです。

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青でマークしたものは肝機能の指標となるもの、黄色は血小板です

帰りの電車を待っている間に検査結果報告書に目を通し、家に帰ってから過去の結果を引っ張り出して比べてみました。2014年1月から保存してあります。途中、紛失している結果もありますが、ほとんど残っています。

なぜ、肝臓なのに血小板なの?

さて、私のAST、ATL、それに血小板の結果をお知らせします。その前に、肝機能を測るための数値はASTやALT以外に沢山あるはずなのに、なぜ、一見関係なさそうな血小板を取り上げたか説明させていただきます。血小板とは血液が固まるときに働くものだよね、と思われている方がほとんどだと思います。実は、肝臓の線維化と関係していることがわかっています。肝細胞障害が持続すると肝臓内にコラーゲンなどの線維性タンパク質が集まってきて、肝線維化が現れます。肝線維化は肝炎や肝硬変の病態なので、線維化が進んでいるか調べることは非常に重要です。しかし、肝臓からバイオプシー(生検)により細胞を採るのは大変ですね。一方、肝硬変の患者さんで肝線維化が進むと血小板減少が高頻度で観察されます。そこで、線維化が進んでいるのか調べるためのバイオマーカーとして血小板の数の変化を見ることが重要なんですね。

私のAST、ALT、そして血小板

保存されている検査結果で、グラフを作ってみました。検査開始は、2014年1月です。最初の3回は、人間ドックの時の結果です。それ以降は、近所の病院での結果です。単位は、記入していません。直ぐにわかっていただけっますように、正常範囲内です。例えばASTやALTは、肝細胞が痛んでいますと、すぐに上昇し、100を超えてしまいます。血小板は測定期間中は一定ですので、特に肝線維化が進行しているようなことはないと思います。その他の肝機能を測定する数値も、おかげさまで全て基準値内です。

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2014年か2020年までの検査結果。AST、ALT、そして血小板です。

単位は省略しています。一部、結果を消失したところがあります。

心配しすぎ、でも・・・

これからも半年ごとに検査です。次は12月28日の年末です。そのころには新型コロナが消えてなくなっていれば、そうはいかなそうですね。

このような検査結果でありがちなのが、過度の心配です。私の家内は特にそうですが、血液検査結果で、1項目でもL(低い)あるいはH(高い)のマークがついていると大騒ぎします。その際に私は、「お医者さんはね、毎日毎日、多くの患者さんの数値を見ているんだよ、それのプロなんだから」「どこか悪くなるとね、1個じゃなくて関連して動くものがあるんだよ、それをね、お医者さんは知っているから1項目の変化で一喜一憂しちゃだめだよ」なんてことを家内に説明します。でも、なかなか納得してくれません。それで、後日、担当医の先生に聞きに行くなんて言うことも度々です。ただし、家内の場合は、特別かもしれません。実は、敗血症で集中治療室(ICU)を経験しています。担当医の先生に高熱で具合が悪いことを訴えたそうなのですが、ほとんど信じてもらえなかったそうです。そのため手遅れになってサイトカインストームに至り、ICUへという過去を引きずっているからです。時を見てこのブログでは、ICU退出後の外傷性ストレス障害(post-traumatic stress disorder, PTSD)について書かせていただこうと思っています。私達家族が経験した、皆さんの想像をはるかに絶する凄まじい実際に起こったエピソードの数々を、ありのままお伝えできたらと思っています。

*7月4日「結婚、妊娠、出産、そして集中治療室(ICU)」から