高尾から東京までの20個以上の駅のお便所の位置を記憶していた

お話していますか?

これはあなたの臓器の間の会話についてです。

 

物心ついたころから、下痢が日常茶飯事でした。一番困ったことは、小学校で授業中にお便所(のほう)に行けないことです。私が小さかった頃、今から45年以上前の話になりますが、でお便所に行ったことがクラスメイトにばれてしまったら、さあ大変です。その時から、「うOこ野郎」とか、「うOちちゃん」というあだ名で呼ばれてしまいます。さらにひどいことに、をしている際中に頭上からお水が降ってくる、扉の隙間から足に向かって水を流される危険もありました。こうやって書くと恐ろしい時代を生き抜いたもんだなと思います。それは集団生活をしていく上で乗り越えなければならないことでした。

 

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なので、「お腹が痛いぞ」と感じた瞬間に「お腹痛のストップウォッチ」が押されることになります。話を大学1年まで飛ばしますが、相変わらず下痢が一番の悩みでした。その頃は、山梨に住んでいました。大学は東京の山手線のほぼ中心に位置していましたので、行きも帰りも電車の旅、2時間半です。朝一の講義に出るためには、6時26発に乗らなければなりません。ご飯を食べ、汲み取り式のぼったん便所に行って、それから駅に向かいます。学生ですから、ぎりぎりまで寝ています。そのため、ゆっくりお便所している暇はありません。そして、駅に着き、電車に乗り込みます。東京の最初の駅は、高尾です。ここでオレンジ色した国電(中央線)に乗り換えます。この辺で、お腹痛のストップウォッチがONになります。ご存知の方は多いと思いますが、朝の中央線の混み具合は尋常なものではありません。私は始発の高尾から乗りますので座っているのでが、お尻の穴を締めるための筋肉は常に活動状態です。そして、ぎりぎりまで我慢し、どうしても爆発してしまうようなときは、混み混みの人を押しのけ、お便所に向かってまっしぐらでした。

 

なので、高尾から東京までは20個以上の駅があると思うのですが、ほとんどすべての駅のお便所の位置を記憶していました。できるだけ短時間でお便所に駆け込めるようにするためです。今みたいにきれいな様式便所ではありません。いろんなところに阻喪が見られる、悲惨な、でも私にはピカピカに見える和式の便器でした。もう一つの対処法は、正露丸です。あの、臭いがいかにも薬らしい、黒い玉の正露丸です。常時、鞄に正露丸を忍ばせておいたので、その通り、チャックを開けると正露丸臭が漂います。大学生の頃でしょうか、お砂糖で包まれた糖衣錠が出ました。そのおかげで、電車の中でも水なしで容易に飲めるようになりました。

 

それでは、まず、なぜそんなに下痢とお友達だったか?それは、すごく神経質だったからです。電車でお腹が痛くなったらどうしよう、考えれば考えるほどお腹に神経が集中し、下痢を導いてしまっていたようです。2つ目は、朝、ゆっくりと用を足さなかったことだと思います。要するに、出し切っていなかったんですね。

 

それでは、どうやって下痢から解放されたのか、それは悪友のおかげでした。大学3年生の時は、卒業したら就職するつもりでした。それで、3年生の時に火が点いてしまいました。何に火が点いたかと言うと、遊びにです。就職したら遊べなくなるから今のうちに遊んでおこう、この発想と悪友が、私を悪い道に引きずり込みました。と言っても、お昼にテニスをして、夕方から飲みに行って、友人宅で徹夜マージャン、この繰り返しです。なぜ、これで長いお付き合いの下痢が去って行ったのでしょうか?それは、徹夜マージャンの終盤、すなわち早朝にあります。特に私がトップだったりすると、お腹が痛くなってもお便所に行かせてもらえません。それに、そもそも生活リズムが乱れに乱れています。神経質はどこかに放置されてしまいました。だって、寝る所はマージャン卓の置いてある部屋だったり、悪友の決してきれいとは言えない部屋に4人で雑魚寝するわけですから、神経質はどこかに飛んで行ってしまっても当たり前です。

 

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それでは、少し学術的な話をしましょう。セロトニンという名前、聞いたことありますよね、神経伝達物質です。何をしているのか、それに興味がある方はご自身でお調べください。どうしてもわからない、知りたい方はコメントやTwitter、あるいはホームページから私に問い合わせてくださいね。そのセロトニンが、実はで作られていることがnatureかScienceに出たのです。かなり前だと思います。その後もたくさんの論文が出ていますが、難しく言うとGut-Brain Axisというやつです。が会話しているということなんですね。Heart-Brain Axisなんていうのもあって、要するに各臓器セロトニンのような神経伝達物質で会話しているわけです。なので、私の下痢の会話が上手くいかなかったことによるものだと思っています。

 

最近は、若返りに必要なタンパク質が肝臓で作られ、それが認知能力の改善や神経細胞の成長に関与するなんていう論文も出ています。そもそもの研究の始まりは、ある程度歳をとったマウスで運動させたグループと運動をほとんどさせなかったグループ(カウチポテトと呼んでいます)を準備し、運動グループから得られた血をカウチポテトマウスに注射してやると、認知能神経細胞に影響が出た、すなわち若返り効果があったということです*。ただ、この研究はちょっと離れたところから見る必要があるように思います。身体的な理由があって運動ができないなどの場合は例外ですが、他人の血を注入したりしなくても、単純に常日頃から運動していればある程度の機能は保てますよ、というメッセージとして受け取れるのではないでしょうか。あまり神経質にならず、農作業でもして身体を常に動かしていれば、田舎暮らしを楽しめるのかなと思いました。皆さんも、臓器さんたちにあまり負担をかけないようにしましょうね。臓器が疲れるとも疲れます、が疲れると臓器も疲れます、負のスパイラルは避けましょう。

*Science : Protein from blood of exercising mice rejuvenates brains of ‘couch potato’ mice. By Jocelyn Kaiser. Jul. 9, 2020