高校の化学の先生が私の釣りのお師匠さん

魚釣りが大好きでした

私は、子供のころの趣味は魚釣りでした。関東のはずれの山に周囲を囲まれた田舎町に住んでいました。高校生になると、渓流にヤマメを釣りに頻繁に行きました。高校の化学の先生が、私のお師匠さんです。今では考えられませんが、何度も連れて行ってもらいました。ある時、お師匠さんは高校3年生のクラス担任でした。卒業式は3月15日です。そして、なんとヤマメの解禁日も3月15日です。釣り人にとって解禁日は待ちに待った日、どうしても魚釣りに行かなければなりません。その時私は、高校2年生でした。卒業式でお師匠さんは、卒業生との別れを惜しんでを流していました。そのを見ると、私も泣けてきました。式が終わり、解散です。先輩の皆さんが、学校に別れを告げて出ていきます。それを見送ると、早々にお師匠さんは帰る準備を始めました。「ついさっきまで泣いていたのに」と思いながらも、私は先生についていきました。

 

高校では、化学部の部長です。化学部の指導は、もちろん釣りのお師匠さん。そんな環境ですので化学ができないわけがありません。部活動の時間には、好きな実験をやらせてもらえます。それに、わからないところはいつでも教えてもらえます。難問の解き方も、釣りに行く途中で教えてもらえます。本当に素晴らしい先生でした。

 

生物部の部長も兼任してました。魚はもちろんですが、昆虫も小さいころから大好きです。理系で受験をする人は、普通物理と化学を選択します。ところが私は、大好きな生物を選び、そして得意な化学で受験しました。受験できるところは限定されましたが、多少困ったくらいで、大したことはありませんでした。どこの大学の試験だったかは忘れてしまいましたが、2次試験の生物でカモノハシを描く問題が出ました。これも、すらっと描けました。高校時代で生物の中でも一番好きだったところは、遺伝子の発現でした。特に遺伝暗号が大好きでした。3文字の塩基が1つのアミノ酸を指定する、高校生の私には美しすぎました生命の神秘に感動したのを今でも忘れません。その時に、まさか将来、私が遺伝暗号を使う職に就くなんて、まったく思いも寄りませんでした。

 

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これらは、私が作った毛ばりです。Fly Fishingで使ったものです。

大学に進学しても、研究室に入っても、大学院に行っても、そして就職しても魚釣りには行っていました。一番の思い出は、米国ニュージャージーに留学中、研究仲間(collaborator)のGeorgeポスドク)とFly Fishingに行った思い出です。ニュージャージー州には、有名な渓谷があり、そこではFlyでレインボートラウトとブラウントラウトを釣ることができます。その時、Georgenatureに論文がもう少しで受理されるところでした。そんな状況ですから、私と釣りに行くGeorgeを見かねて、留学先のボスから「お前達はここに研究しに来ているんだ、だから釣りは控えめにしろ」と小言を言われました。ごもっともと言えばごもっともなのですが、Georgeと私はFly Fishingが大好きです。やっぱり、止めれませんでした。ちなみに、Georgeの論文は無事にnatureに受理されました。私の論文も少し遅れはしましたが、Mol Cellという科学雑誌に受理されることになりました。

 

このように魚釣りが大好きでした。それが巡り巡ってというか趣味が高じて、30代後半からはゼブラフィッシュという3cmくらいの熱帯魚を使って、遺伝子の実験をすることになりました。その成果は、論文*で発表しております。

 

*Wada T., et al., Antisense morpholino targeting just upstream from a poly(A) tail junction of maternal mRNA removes the tail and inhibits translation. Nucleic Acids Res. doi:10.1093/nar/gks765, 1-10, 2012.

アンチセンスモルフォリノオリゴを標的とする母性mRNAの3’非翻訳領域末端に設計すると、poly(A)鎖が削られ翻訳反応が抑制されることをゼブラフィッシュ初期胚やイトマキヒトデ卵で発見した。